日本飲食企業の中国進出の可能性と成功ポイント
株式会社船井総合研究所
船井(上海)商務信息咨詢 有限公司 董事 二杉明宏
筆者は、船井総合研究所(日本)で、20年以上外食企業を専門に行っており、 2015年以降は中国でも飲食企業のコンサルティングを行っている。
中国では、2022年12月に、長く続いたゼロコロナ政策が緩和され、一気に感染が拡がった。
今後、中国の外食産業はどのように推移するのか、日本の飲食企業にとっての中国市場の可能性と成功のポイントについて考察します。
日本の飲食産業の成長の活路は、インバウンドと海外展開
日本の外食産業は1970年から80年までの10年間に爆発的に成長し、1997年には市場規模が29兆円に達した。
しかし、その後は、①人口の減少、②外食率の低下により、これを超える成長は難しくなっている。
ここから先、日本の外食産業が成長する活路は、インバウンド消費と海外展開(アウトバウンド)が鍵となることは疑いない。
大手飲食企業は、海外展開に活路
2022年1月3日付の日本経済新聞は”「スシロー」海外出店50~60店、初の国内超え”と大手飲食企業が軒並み、海外展開を加速する意向であることを報じた。
「スシロー」の運営会社は2023年、国内の出店数の2倍以上となる最大60店を海外で出店する。世界では新型コロナウイルス禍が収まり始めた国もあり、外出制限の緩和を受けて飲食店への来店が回復している。日本食の人気も続いており、人口が増加する地域の需要を取り込む。~同期間に国内で出店するのは18~22店で、年間の出店数で海外が国内を上回るのは初めて。22年12月には海外の店舗数が計100店に達し、国内(約630店)の15%程度にまで増えた。
“牛丼店「すき家」や回転ずし「はま寿司」などを展開するゼンショーホールディングス(HD)は23年3月期に海外で469店(前期比37%増)を出店する。国内(124店、同35%増)の4倍近い規模だ。「米食文化がある中国などを中心に出店が増えている」(担当者)という。海外の店舗数は5,500店以上と、国内を含む全体の過半数を占める”
また、いわゆる最大手企業だけでなく、日本国内では、数店舗~10店舗程度の展開である外食企業が、飽和する日本市場で店舗展開するよりも、と海外に活路を見出すケースも、コロナ以前には増えていた。
日本の外食企業の中国展開
中でも、大きい位置づけを住めるのが中国市場だ。日本の隣にあり、人口14億人を抱える大国である中国は、長きにわたって、著しい経済成長を遂げてきた。
日本の外食企業にとって、極めて魅力的な市場であり、多くの企業が進出してきた。既に、吉野家ホールディングス、ゼンショーホールディングス、サイゼリヤのように中国国内に、数百店舗を展開する企業も存在する。
ゼロコロナ解除後、急速に回復する中国市場
国家統計局が発表したデータによると、2023年1月から3月までの飲食業界の売上高は1兆2,136億元で、13.9%増加、3月の売上高は3,707億元、26.3%増と増加。
2019年1月から3月の、飲食業界の売上高は1兆1,000億元(前年比9.6%増)同年3月の売上高は3,393億元(前年比9.5%増)であるので、コロナ以前よりも増加している。
出所:国家统计局・红餐产业研究院
Afterコロナの中国市場の可能性
最近の報道によると、ゼロコロナ政策の解除により、既に中国国民の80%以上が感染を経験している、と言われている。
これにより、集団免疫が早期に獲得され、経済成長や飲食企業の業績も、早期に回復する可能性がある。
実際に、弊社のクライアント先の飲食企業でも、春節(2023年1月17日~ 27日)の前後で、
2019年以前を含めて、過去最高の業績となった企業もあった。
実際の感染率は、発表されている数字よりも高い可能性があり、短期的に集団免疫が獲得される可能性がある。その場合、外食産業の復活は予定より早まる。但し、コロナ以前からの課題であるSCの飽和、家賃の高騰により、出店は郊外型・生活商圏型、パーソナルユースがより伸長する可能性が高い。
日本の外食企業が中国市場で成功するポイント
POINT 01 自前出店か現地企業との提携、FC展開か?
中国に進出するスキームとして、自前で出店するのか、現地企業と提携するのか、はたまた味千ラーメンのようにフランチャイズ展開するのか、自社の強み、中国展開のリソースに応じて見極める必要がある。
また、現地企業と提携する場合やFC 展開する場合は、相手企業の見極めが成否を分ける。それには、相手がどんな会社であるかだけでなく、経営者や貴社との提携を担当する責任者の見極めも含まれる。
POINT 02 業態やメニュー、販促等のローカライズ
日本の業態やメニューをそのまま展開しても、うまくいかないことも多い。かといって、現地に合わせすぎては、特徴がなくなってしまう。日本で培った業態の強みを生かしつつ、中国人の好みや生活スタイル、飲食のスタイルに合わせて、どのようなローカライズを行うかが大切になる。マーケットの変化に敏感な中国人がいなかったり、日本人の得られる情報のみで方向性を決めたりする場合、提供するサービスが中国人の価値観とズレが発生する場合がある。
POINT 03 出店立地の見極め~特に中国特有のSC出店について~
中国では、飲食店の立地が、日本とは大きく異なることにも注意が必要。
コロナ渦を経て変化する可能性もあるが、中国人の消費活動の中心はSCであり、繁盛する店を多店舗展開するには、優良SCを見極め、SC出店を成功させなければならない。
POINT 04 日本品質の再現
日本企業が中国に進出して失敗するケースとして、中国で日本と同等の品質が出せていない場合が多い。
日本では、鮮度、歯ごたえ、出来立てなどを強みとしているにも関わらず、その良さが全く再現できていないケースが多い。
材料や従業員の教育等、どのような日本品質を再現するか、も重要なポイントとなる。
POINT 05 中国の労働慣習に合わせた人材活用・制度日
日本と比べると転職に対する抵抗感が低く、転職してキャリアアップを図るという風潮もある。引き抜きやヘッドハンティングも多く、社長や役員クラスの人材が競合他社に転職しているケースも少なくない。提携や FC 展開ではなく、自前で店舗展開する場合は、このような労働環境の中で、どのように自社理念を浸透させ、人材を育成するか、制度を準備するかも大きなポイントとなる。
船井(上海)商务信息咨询有限公司について
船井上海の飲食部門は、22名(日本人5名、中国人17名)の 飲食業界専門コンサルタントが、日本飲食企業の中国進出を強力にサポートいたします。
二杉明宏 总经理
日本の船井総研の飲食部門の責任者を経て、上海に赴任。業態開発、新規出店、多店舗展開、既存ブランドのブラッシュアップによる持続的な企業業績向上のプロデュースを得意とする。
郎禄媛 董事
2011年株式会社船井総合研究所入社。2014年船井(上海)商劣信息盗洵有限公司出向。入社以来、飲食業界のコンサルティングに従事。
中国及び日本の飲食経営者に多数のファンを持つコンサルタント。2020年総経理に就任。
石橋恒夫
日本料理企業を経て、株式会社船井総合研究所入社。入社後は、日本で飲食業界を専門にコンサルティイングに従事した後、2018年より中国での飲食業界のコンサルティングに従事。飲食業の出店・立地戦略を得意とする。
原康雄
大手フランチャイズチェーン店人事部を経て、船井総合研究所入社。 2022年より、船井(上海)商劣信息答洵有限公司出向。飲食業の本部構築、人事制度構築、sv制度構築等を専門とする。
延原巧実
船井総研に新卒として入社。 入社後、主に外食、テイクアウト、デリバリーなど様々な外食分野のコンサルティングサービスに従事。デジタルマーケティングを通じて企業の業績向上を得意とし、それぞれの企業の実情に応じた提案を行っている。 2022年6月より船井上海に所属。中国では30~600店舗規模の企業を中心に業績向上と成長支援を行っている。
2012年に船井(上海)商务信息咨询有限公司を設立。
当初は、製造業を中心に日系企業の中国展開コンサルティングを実施していましたが、2015年以来、飲食特化部門を設置し、日系企業だけでなく、中国現地の飲食企業のコンサルティングを多数手がけています。
船井上海による日本飲食企業の中国進出支援の特徴
- 日系コンサルファームだけでなく、中国現地でも珍しい、飲食業界に特化した専門コンサルタントが20名以上在籍。現地企業を含めて、飲食コンサルで200社以上の実績。
- 日本人と中国人の飲食業界専門コンサルタントが対応するため、中国人の消費者動向、食事の好み、食事習慣に合わせたローカライズの提案が可能。
- 中国現地の飲食の立地事情を理解。特に、中国特有のSC 出店についてのデータ・ノウハウを豊富に有する。(中国現地の飲食トップ企業も、船井上海の立地分析を利用)
- 中国の飲食業界に豊富な人脈を有するため、現地企業と提携する場合、相手企業の見極めアドバイスも可能。
- 現地法人を設立し、現地で幹部社員、本部、店舗スタッフを採用、育成する場合、現地の労務習慣に合わせた、本部づくり、人材育成、制度構築の支援が可能。
お客様の声
当社が船井総研とお付き合いする根底には『素直、プラス発想、勉強好き』という船井流の考え方への共感があります。
船井総研の皆さん一人ひとりがこの考え方の下で、自らの成功・失敗体験などを分析し、感性を加えて論理化しようとしていることが感じられて、とても信頼できます。
当社として約15年のお付き合いですが、私自身としては約10年前、開発企画部に異動してきた入社5年目の頃より関わっていただいています。
当時の私はその部署で通用しておらず悔しい思いもしていたのですが、船井総研のコンサルタントの方が私のプレゼンテーションを『面白い』と言ってくれて、心が救われたことをよく覚えています。
今、私は経営者となり、船井総研との関わり方は当時と変わりました。
当時、話していたことはメニュー戦略などの“点”でしたが、現在は事業戦略など経営という視座での“面”。
そしてもう1つは情報です。
私は得た情報から自分たちにとって参考になることを抽出し、活かすことが得意なタイプなのだと思っています。
ですから船井総研から、繁盛店や特徴的な店の情報を多くいただけることが、とにかくありがたい。
会社にとってコンサルティングとは『何かを与えられる』ということではなく、『どんなことを学び、どのように活かすか』ということだと思います。経営者は自分たちの特性を理解して、情報の活かし方を考えることが大事ですね。
またコンサルタントは、経営者にとって生きた情報をもらえるだけでなく、賛成・反対を単刀直入に言ってくれる存在であることも大きいでしょう。
中国の現地法人の者も『背中を押していただいたり、駄目なことは駄目と言っていただけることが本当にありがたい』と話しています。 異国の地で日本人が商品開発して事業を進ることは箇単ではありません。 中国での事業展開には、中国のマーケテング感覚を踏まえた助言が大きな役に立っています。
そして何より、船井総研は一緒にやってくれる存在です。“提案に責任を持たない上から目線のコンサル”ではありません。
一緒に会議をしていると、必ず当社のことを『うち』と呼んでくれる。言葉遣い1つから、一緒にやっているチームだという実感があります。
私は経営者として、右肩上がりの成長にこだわっています。その中で、船井総研には今までと変わらないパートナーでいていただきたい。
(株)船井総合研究所について
1970年の創業来、業種別の成長実行支援コンサルティングを強みとし、
コンサルタント800名が、160業種以上の専門チームを編成し、全国5,356社(2021年度実績)のコンサルティングを行っています。